「その仕事、圧倒的か?」~おいしい牛乳開発者による"価値創造"に対する想い~

「新たな価値を創出せよ」というミッションを負った、主に大企業の管理職の方。そして、「新たな価値を創出したい!」という志を持つすべての方へ。

理論だけじゃない、研究だけじゃない、価値実現の起承転結。これでもかというほどの”実践”の世界を、今こそ見て、知って、活かして、あなたが創る価値創造の糧にしていただきたい…!

神谷哲氏(博士(工学), 博士(農学), 上席化学工学技士)をお招きし、価値創造へのアプローチ方法を語っていただきました。

神谷さんは、明治乳業株式会社(現:株式会社 明治)在籍時、「おいしい牛乳」「らくらくキューブ」「ザバスミルク」などの新規事業に繋がる技術開発に従事し、計7回の社長賞を受賞した経験をお持ちです。

事業形態は違っても、価値創出には共通の真理があります。こちらの講演は、さまざまな価値創造を共有し、語り合うシリーズの記念すべき第一回目となります。

題名:その仕事、圧倒的か? ~価値創造に対する想い~
日時:2024/6/21(金) 19:00~20:30
場所:オンライン(Microsoft Teams)
会費:無料
定員:オンライン 500名
主催:Mission Lab
後援・協力:BRIDGE TERMINAL / SECI体感ラボ/NPO法人SECIプレイス

https://seci-taikan-labo-20240621.peatix.com
- もくじ -

シリーズを企画推進している団体の紹介

・Mission Lab
 ソニーの社内コミュニティ。個人のミッションやパーパスを探求する場として2019年から活動開始、はや5年が経過。拠点となるブリッジターミナルは、工場併設型のコミュニティスペース。

・SECI体感ラボ
 知識創造理論に基づき、社会教育の推進や他の活動を行っている任意団体。

・SECIプレイス
 みんな仲良く、ノリ良くマメに。個人のミッションを探求する場として活動しているNPO法人。

その仕事、圧倒的か?神谷さんの登場

神谷

皆さんこんばんは。長瀬産業の神谷と申します。本日は「その仕事、圧倒的か?」というテーマで、私の経験をもとにお話しさせていただきます。

✳️対談相手には、ミッションラボ、そしてSECI体感ラボの大崎功一さん(※なお大崎さんはSECIプレイスの副代表理事も務めていて、とってもマルチ!)

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アイスブレイク〜ゴーギャンの絵から

『我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこに行くのか?』

神谷

この絵、結構好きで。過去、現在、未来がこの絵の中にあるらしいんですよ。

✳️っと…絵の解説は長くなるからここでは割愛!未来を右と考えるか左と考えるか、という問いかけから始まり、決して正解はない、視点の多様性を考えることが大切なんだよというメッセージは、今回のご講演に一貫して通奏するものでした。

神谷さんの自己紹介と背景

神谷

まずはいま僕が所属している長瀬産業について簡単にお話ししますね。創業192年、商社機能、製造機能、研究所など多機能を持っているんですが。特に接点価値が重要で。接点とはお客様との接触点。そこでの価値創造が企業の成長に直結するんです。総じて、夢のある会社ですね。

僕、学生時代に留年しちゃいましてね。まぁ色々とエピソードはあるんですが、その後、社会人になってから博士課程に進みました。

大崎

博士課程に進んだきっかけは何ですか?

神谷

常に学び続けることが重要だと感じたからです。特に、実務と学問の両方を追求することで、より深い知識と経験を得られると考えまして。

仕事の圧倒的思考プロセス

神谷

僕が大切にしているのは、思考プロセスの自由な変換です。多様な視点と解釈を持つことが重要であり、客観性と多様性を意識することが価値を生み出す鍵です。

大崎

具体的にどのようなプロジェクトでそのような思考プロセスを活用したんですか?

神谷

例えば、過去の業績にはなりますが、代表的なものとしては『明治おいしい牛乳』の開発プロジェクトですね。製品の品質を向上させるために多くの部門と連携し、様々な視点からアプローチしました。結果、画期的な技術を産み出すことができたと思ってます。

『シコウ』について

神谷

思考、志向、試行、指向、嗜好、至高…
きっと、シコウ、を漢字にしないことがものすごく重要なんですよ。

✳️人間は思考変換機だ、とおっしゃる神谷さん。この短いレポートでは語り尽くせないほどのお話でした。いろんな違いに気づき、選択肢の中から自分自身でシコウを決められる状態は、いわゆるウェルビーイングが高い状態なんでしょうね。精進し近づきたいものです。

価値創造の要素

神谷

価値創造には、素材、加工、評価、接点の4要素があります。これらの要素に圧倒的な差をつけることで、新しい価値を創造することができます。

大崎

なるほど…常識離脱マップについても簡単に教えていただけますか?

神谷

既存の枠組みを超えて新しいアイデアを生み出すためのツールなんですけど。このマップを使うことで、固定観念にとらわれず、新しい価値を発見することができると思います。

具体例として、いくつかの成功事例をキュっと纏めてご紹介します。

明治おいしい低脂肪乳の開発
-凍結濃縮技術を活用して品質を劇的に向上させました。

タブレット状の粉ミルクの開発
-携帯性と利便性を重視して、粉ミルクをタブレット状にすることで、持ち運びやすく、使い易くなりました。

特にね『おいしい牛乳』は、切り口を変えてアプローチしたらメガヒットになった、という実例だと思うんですよ。

✳️これらのプロジェクトは、従来の常識にとらわれない発想から生まれたものです。まさに、イノベーション!

定量的な変数(横軸)と情緒的な変数(縦軸)をうまいこと操作することで、新たな価値がうまれる(価値創造!)これって、まさにこの講演のお題そのものですね。

連続的イノベーションの秘訣

神谷

イノベーションを続けるためには、3つの勇気【挑戦する、諦めない、そして壊す】と長期的な視野が必要です。適切なタイミングで挑戦し、繰り返し試行錯誤することが大切です。

大崎

試行錯誤の具体的なプロセスについて教えてください。

神谷

まず、問題を詳細に分析し、仮説を立てます。その仮説を検証するために、実験やテストを繰り返します。結果に基づいて仮説を修正し、再度テストを行います。このプロセスを繰り返すことで、最適な解決策を見つけ出します。

さらに言うと、イノベーションを続けるためには「価値の再定義」が必要だと考えています。

✳️ 変化し続けることが大切なんですね。価値は主観と客観の間で揺れ動くものであると知り、徹底した科学的な方法を経て、最適解に辿り着くプロセスは、他業種にも通ずるものが大いにありそうです。

価値の再定義についても目から鱗。つまるところ、固定された視座から一旦離れて観察し、深く『シコウ』することなのだと理解。

  1. 接点に目を向け意識する
  2. 情緒的価値の捉え方は多様である
  3. 深慮はタイパとは対極
  4. プロダクトアウトではなく顧客視点に立つ

この対談を通して、神谷さんから頂いたメッセージは、きっと上記のようなまとめになるかなと。

上司との関係性

神谷

最後に、上司との関係についてお話ししようかなと。

上司との関係では、

耐えること 
打ち消すこと
逃げること
乗ること

の選択が求められます。上司の言葉を活用し、否定されないように工夫することが重要です。

神谷

例えばですけど。あるプロジェクトで上司から厳しい指摘を受けたときも、その指摘を前向きに受け入れ、改善点を見つけることで、プロジェクトを成功に導いた経験はありますね。

大崎

フィードバックをどのように活用しましたか?

神谷

きっと僕らが見落としている視点を提供してくれる貴重なものだと思うんですよ。それを元に、プロジェクトの方向性を修正し、より良い結果を生み出すことができました。

れぽーたーずぼいす

✳️ 全てがなんだかSECIですね。
そう、ライターは見事なSECIだと感じました!神谷さんは一貫してプロセスエンジニアとして活動され、多くのことを成し遂げてきたイノベーションの実践者でいらっしゃる。実践のプロセスでSECIが如何に廻ってきたか。

『振り返ればSECIだった』

ということではないでしょうか?

そして、価値創造のためには、自分自身が楽しむことを忘れずに、周囲と共に新たなアイデアを生み出していくことが大切である、との言葉も印象的でした。やっぱり楽しくなくちゃね!


神谷さん、心に響く、貴重なお話をありがとうございました。

神谷 哲(かみや てつ)さん

博士(工学), 博士(農学), 上席化学工学技士
長瀬産業 リスクマネジメント部 グループ製造業経営革新課 課統括
東北大学大学院 農学研究科 特任教授(クロスアポイントメント)

<略歴>
1998年 明治乳業株式会社(現:株式会社 明治)中央研究所 所属
2000年 群馬医薬・栄養剤工場(GMP) 製造主任
2004年 技術開発研究所 生産技術研究部
2010年 横浜国大学大学院工学府 機能発現工学専攻:博士(工学)
2019年 研究戦略統括部 研究戦略G G長

2021年 長瀬産業株式会社 (10月より)
2022年 東北大学大学院農学研究科 教授(クロスアポイントメント制度)
       次世代放射光の社会実装(特に農学、食学)がミッション
2023年 岩手大学大学院連合農学研究科 生物資源科学専攻 博士(農学)
2024年 東北大学大学院 農学研究科 特任教授(クロスアポイントメント)

<明治乳業時代:社長賞 7回>
2000年 明治おいしい牛乳の工程開発 
2014年 ダメージレス 乳化・分散装置の開発
2015年 飲み込みのコンピューターシミュレータの開発 
2016年 高精度比例添加・混合装置開発
2018年 ザバスミルク製造(凝集制御)技術開発
2019年 世界初 乳の凍結濃縮技術開発 
2020年 固形化粉ミルク開発、戦略的特許出願

<公的機関表彰 2回>
2019年 第20回 民間部門農林水産研究開発功績者表彰 (世界初 乳の凍結濃縮技術の開発)
2023年 第22回 オレオサイエンス賞受賞(日本油化学会) (放射光を駆使した評価技術)

→ 一貫して、プロセス・エンジニアであり、創発力学の実践者(機械工学×化学工学、計算科学×農学、光科学×製剤学)

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この活動は、NPO法人SECIプレイスの社会教育の一環としての位置付けでもあります。

運営メンバー(五十音順):青木千恵 梶並 珠美 榊原惇志 中村恒司 村松成治

レポート作成:NPO法人SECI プレイス
取材:水野昌彦/村松成治
ライティング:清水美也子@Assemblage LLC
WEB構成:水野昌彦@ideal brands.jp LLC
主催代表:大崎 功一(SECI プレイス副代表理事)

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